偉人たちの知られざる物語

「努力の天才」野口英世も? 知られざる「豪快すぎる金遣いと借金」

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世界を股にかけた医学者、その意外な一面

野口英世といえば、黄熱病や梅毒の研究で世界的に知られる細菌学者です。貧しい農家に生まれながら、火傷のハンディキャップを乗り越え、血のにじむような努力で世界の頂点に上り詰めた「努力の天才」というイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。しかし、そんな偉大な科学者にも、意外な、あまり教科書には載らないような人間味あふれる一面がありました。それは、彼が驚くほど「お金にルーズ」だったという事実です。

借金、また借金…若き日の豪快な金遣い

野口英世の金銭感覚は、研究への情熱とは対照的に、非常に豪快でした。故郷・福島で医師を目指して上京した頃から、その片鱗は見られます。学費が足りなくなると知人や恩師に借金を申し込み、その金で遊郭に入り浸ったり、友人におごったりすることもあったようです。

特に有名なのは、渡米資金を巡るエピソードです。アメリカでの研究機会を得た彼は、その渡航費や留学費用を工面するために、多くの人々に借金を重ねました。当時の金額で数千円、現在の価値に換算すると数千万円にも匹敵すると言われる莫大な借金だったといいます。この借金は、彼の人生を通じてついて回るものとなりました。

なぜ、偉大な学者は借金まみれだったのか

なぜ、あれほどの才能と努力を持った人物が、これほどまでにお金に無頓着だったのでしょうか。その理由としては、いくつかの側面が考えられます。

まず、彼の楽観的で豪放磊落な性格が挙げられます。細かいことにこだわらず、「なんとかなる」という強い信念(あるいは思い込み)で突き進むタイプだったのでしょう。研究に没頭するあまり、生活費や借金の返済計画といった現実的な問題に目が向かなかったのかもしれません。

また、野口英世は友情に厚い人物でもありました。友人や知人に惜しみなくお金を使うことも多く、頼みごとをされると断れないところがあったようです。これも借金が増える一因となったと考えられます。

さらに、彼の「金銭感覚の欠如」は、貧困の中で育った反動や、お金を得た時の喜びをすぐに消費する癖から来ているという見方もあります。苦労して得たお金も、手元にあるとすぐに使い切ってしまう。研究費が入っても、すぐに遊興費や交際費で消えてしまう、そんな繰り返しだったようです。

それでも彼が周囲に愛された理由

借金まみれでだらしない一面もあった野口英世ですが、それでも彼は多くの人々に支えられ、愛されました。その最大の理由は、彼の並外れた才能と、研究にかける純粋で情熱的な姿勢、そして何よりも人を惹きつける人間的魅力だったと言えるでしょう。

お金にはルーズでも、研究の話になると目の色を変え、周囲を圧倒する熱意を見せる。困難に立ち向かう不屈の精神力。そうした輝きが、彼の金銭的な欠点を補ってあまりあったのでしょう。彼に金を貸した人々も、単なる浪費家ではなく、その才能と将来性、そして何より野口英世という人間そのものに賭けていたのかもしれません。

不完全さも魅力のうち

野口英世の借金まみれのエピソードは、教科書的な「偉人」のイメージからはかけ離れているかもしれません。しかし、完璧ではない、こうした人間臭い一面を知ることで、私たちは野口英世という人物をより身近に感じることができます。

豪快にお金を使い、周囲に迷惑をかけることもあった。それでも、研究への情熱と人間的魅力で人々を惹きつけ、偉業を成し遂げた。野口英世の知られざる金銭事情は、彼の不完全さも含めて、私たちに多くの示唆を与えてくれる物語と言えるのではないでしょうか。