天才アインシュタインも「うっかり」? 知られざる人間味あふれるエピソード
天才のイメージを覆す「うっかり」エピソード
「E=mc²」という数式で世界を揺るがし、相対性理論を打ち立てたアルベルト・アインシュタイン。その名前を聞けば、多くの人は威厳ある白髪の物理学者、あるいは難解な理論を操る孤高の天才を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、歴史の記録をたどると、そんな「偉大すぎる」イメージとは少し異なる、私たちの隣にいてもおかしくないような、人間味あふれるエピソードがいくつも見つかります。
今回は、アインシュタインの知られざる一面として、彼の「うっかり」や「不器用さ」に焦点を当ててみましょう。天才的な頭脳とは裏腹に、日常生活ではしばしば周囲を驚かせ、時には困らせるような出来事を引き起こしていたのです。
ノーベル賞金をめぐる約束と意外な結果
最も有名なエピソードの一つに、ノーベル物理学賞の賞金を巡るものがあります。アインシュタインは、後にノーベル賞を受賞した場合、その賞金すべてを最初の妻であるミーレヴァ・マリッチに贈るという約束を、離婚条件の一つとして交わしていました。彼が1921年にノーベル賞を受賞した際、この約束通り、その賞金はミーレヴァに送金されることになります。
しかし、ここからがアインシュタインらしい展開です。彼はそのまま全額をミーレヴァに渡すのではなく、一度自身で運用し、金額を増やしてから贈ろうと考えたようです。物理学の天才は、経済の分野でもその手腕を発揮できると考えたのかもしれません。ところが、投資はうまくいかず、賞金は期待通りに増えるどころか、一部を失ってしまいます。結局、彼は約束通りの金額をミーレヴァに贈ったのですが、その過程で彼が意外にも世間的なことに疎く、金銭的な管理や運用が得意ではなかったことがうかがえます。
相対性理論のような宇宙の深遠な真理を見抜くことができる人物が、目の前のお金をどう運用するかという、ごく日常的な問題でつまずいてしまう。このギャップこそが、アインシュタインという人物の面白さであり、人間らしさと言えるでしょう。
日常生活での迷子常習犯?
また、アインシュタインは極めて集中力が高い人物でしたが、その集中力が思わぬ形で現れることもありました。例えば、散歩に出かけて道に迷い、自分の家に戻れなくなるということがしばしばあったそうです。あまりにも思考に没頭するあまり、周囲の景色や自分がどこにいるのかを全く認識できなくなってしまうのです。
自宅の住所を覚えていない、自分の電話番号を忘れてしまう、といった話も伝えられています。これは決して記憶力が悪いのではなく、彼の脳が常に宇宙の法則や物理の難問に向けられていたため、日常の些細な情報にまで注意を払う余裕がなかったからかもしれません。
私たちがスマートフォンで地図アプリを見ながら歩く現代とは異なり、当時の日常で自宅に帰れなくなるというのは、かなりの「うっかり」と言えるでしょう。近所の人に助けられたり、警察官に声をかけられたりしたという逸話も残っています。天才の頭の中は、常に壮大な宇宙で満たされていたのかもしれません。
人間味あふれる偉人像
これらのエピソードは、アインシュタインが単なる「計算機」や「歩く百科事典」ではなく、私たちと同じように得意なこととそうでないことがあり、時には失敗もする生身の人間であったことを示しています。物理学という非日常的な世界では比類なき才能を発揮しながら、日常という当たり前の世界では少し不器用な一面を見せる。この対比こそが、アインシュタインという人物をより魅力的で、身近な存在に感じさせてくれるのではないでしょうか。
歴史上の偉人たちは、教科書に載っている業績だけがすべてではありません。彼らの人間的な弱さや、私たちと変わらない日常の姿を知ることで、歴史がぐっと面白く、色鮮やかに見えてくるはずです。