偉人たちの知られざる物語

「コンピューターの母」エイダ・ラブレスも?知られざる「賭博好き」な一面

Tags: エイダ・ラブレス, コンピューター, 数学, 歴史上の人物, 意外な一面, 賭博

「コンピューターの母」の知られざる情熱

エイダ・ラブレス伯爵夫人は、19世紀のイギリスに生きた女性数学者です。チャールズ・バベッジが考案した機械式計算機「解析機関」のために、世界で最初のアルゴリズム、すなわちコンピューター・プログラムを作成した人物として知られ、「コンピューターの母」と称されています。その華麗な肩書きと、詩人バイロン卿の娘という生まれから、彼女にはどこか近寄りがたい天才、華やかな貴婦人というイメージがあるかもしれません。

しかし、そんな偉大な功績の裏には、多くの人が知らない、人間味あふれる意外な一面がありました。それは、彼女が深くのめり込んでいた「賭博」という趣味です。

数学とスリルの交差点

エイダが賭博に傾倒し始めたのは、結婚して数年経った頃からと言われています。当時の上流階級では、社交の場として競馬やカードゲームなどが盛んに行われており、賭け事もその一部でした。しかし、エイダの賭博は、単なる社交辞令や気晴らしのレベルを超えていました。

彼女は数学的な思考力を使って、賭博における勝率を計算しようと試みました。特に競馬に熱中し、過去のレース結果や血統、馬のコンディションなどを徹底的に分析し、自身で複雑な数式を組み立てて「必勝法」を見つけ出そうとしたのです。それは、まるで解析機関で複雑な計算を解き明かすかのような、数学者としての本能的な挑戦だったのかもしれません。

彼女は「馬券を研究する」ための組織を作ったり、競馬場で熱心にオッズや馬の状態を観察したりしました。この時の彼女の情熱は、新しい計算理論を探求する時と同じくらいか、それ以上だったとも伝えられています。

賭博がもたらした苦悩

しかし、残念ながら、数学的な分析が現実の賭博で常に成功するわけではありません。競馬は不確定要素が多く、彼女がどんなに精緻な計算をしても、常に勝つことは不可能でした。

結果として、エイダは多額の借金を抱えることになります。その額は、当時の彼女の財産を遥かに超えるものでした。借金返済のために、宝石を質に入れたり、夫や母親に内緒でお金を工面しようとしたりするなど、様々な苦労を強いられました。賭博は、彼女の輝かしい知性や創造性を、時には人生を破滅に導く危険な方向へと駆り立ててしまったのです。

この借金問題は、家族との関係にも影を落としました。特に、厳格な母親からは頻繁に叱責され、経済的な援助を受ける代わりに厳しい監視下に置かれることもありました。偉大な数学的発見に喜び、輝いていたはずの彼女が、借金の取り立てに追われ、家族に隠れてお金を借りようとする姿は、想像するだけで胸が締め付けられます。

天才が抱えた人間的な弱さ

エイダ・ラブレスの賭博への傾倒は、彼女が単なる「計算の天才」ではなく、感情を持ち、時には過ちを犯す一人の人間であったことを教えてくれます。彼女の人生には、世界初のプログラミングという輝かしい功績がある一方で、賭博による借金という暗い側面も存在しました。

この知られざるエピソードは、完璧に見える偉人たちもまた、私たちと同じように悩み、失敗し、困難を抱えていたことを示しています。エイダ・ラブレスの物語は、彼女の科学的な業績だけでなく、その人間的な情熱と弱さも含めて理解することで、より一層深みを増すと言えるでしょう。天才と苦悩が同居する彼女の人生は、今を生きる私たちにも多くの示唆を与えてくれるのかもしれません。